多様な働き方 先輩テレワーク農家の声 Vol.1 岡木農園 岡木宏之さん

農林水産ダイバーシティ連盟は、都会で働きながら農業事務を支援、あるいは地方で農家をやりながら企業のテレワークをするなどの様々な柔軟な働き方で活躍する人たちのことを、「テレノーカー」と名付け、活躍をサポートしています。

この記事では、「テレノーカー」に焦点を当てインタビューをして、その生活や仕事スタイルをご紹介します。

今回は長野県在住の岡木 宏之さんにお話を伺いました。岡木さんは、ご家族で岡木農園を経営する一方、行政、観光業、農家と連携し各種農業系デジタルサービスを開発するノウタス株式会社では取締役兼長野支社長に就任しており、テレノーカーとして活躍している1人です。

岡木さんの仕事やライフスタイルを通じて、兼業や農業への興味を持つ人々に向けたヒントを探りたいと思います。

岡木さんがテレノーカーになったきっかけ

荻間(インタビュアー):
岡木さんの簡単なプロフィールと現在のお仕事について教えていただけますでしょうか?

岡木さん:
長野県で岡木農園というブドウ農園を両親と共に経営をしております。その前は、金融機関でサラリーマンとして10年弱働いた後、親元に就農して現在ブドウ農家を経営しています。

その一方で、ノウタス株式会社では、取締役兼長野支社長として活動しています。ノウタス株式会社は各種農業系デジタルサービスを開発しており、私はその中でも自治体との新事業の推進を中心に行っています。
私が現役の農家であることを活かして、農家の方々が抱えている課題の掘り下げや、農家を対象とした開発中のサービスを使った感想を開発者に共有を行っています。ノウタス株式会社の活動が長野県で行われる時は、活動のために関係者との調整や営業回りも行っています。

荻間:
金融機関に長く勤められていましたが、いずれは就農することを考えていましたか?

岡木さん:
いずれは農家をやるんだろうなっていうのはなんとなく思っていました。私が農業に転身したのは30歳ぐらいのタイミングですが、結構早いタイミングだったと思っています。

私が務めていた金融機関では他社の商品や他社のサービスを仲介したものを取り扱っていました。自分が商品の開発に携わってないため、本気で売れないっていう悩みがありました。

そのような状況で家業のブドウ農園がブドウを作っていたため、自ら栽培に携わったブドウであれば心の底から営業ができるんじゃないのかと思ったのがきっかけでした。

荻間:

今回のインタビューはテレノーカーがキーワードですが、岡木さんはどのように兼業を確立されていますか?

岡木さん:
私は2パターンの分け方をしています。

まず曜日で分けています。主に月曜日をノウタス株式会社の活動に当てています。もう一つの分け方は、やはり自然が相手なので、雨の日など天気が悪くて、農作業ができない日も資料作成やメールのやり取りなど農業以外の活動を行っています。

天候によっては何も出来ない日がどうしてもありますが、その際に別の仕事で農業に貢献できるのは嬉しいですね。

テレノーカーである難しさと喜び

荻間:
2つ以上の異なるお仕事をされていると、時間管理など大変だったことはありますでしょうか?

岡木さん:
正直未だに苦戦していますが、やはり時間管理が大変です。
さらに仕事によって求められるものが全く違うのも同じくらい大変です。

普段は畑に行ってブドウを育てていくことを生業にしています。しかし、一方でテレノーカーであると、オンラインで打ち合わせする、営業や提案のために資料を作るなど、ブドウを育てることと違うことにも取り組むことが多いです。

様々なことに挑戦できて、多くの人と関われるのは長所でもありますが、求められるものが180度違うのは大変ですね。

荻間:
その苦労された点について、工夫されていることはありますか?

岡木さん:
まだ試行錯誤している段階ですが、時間管理については、意図的に時間を区切ってコントロールするようにしています。限られた時間の中で集中的に仕事をして、次に別の仕事に取り掛かることを心掛けています。

もう一つは、分からないことは人に聞く、お願いをしています。

分野によっては、私よりも他のメンバーがより詳しいこともあるため、1人で抱えずに相談やお願いすることを意図的にしています。

荻間:
テレノーカーで良かったことを教えていただけますでしょうか?

岡木さん:
農業をしているだけでは、会えないような人たちと一緒に仕事できることですね。一緒に仕事することで、新しい技術に触れること、農家目線ではない視点から世の中を知れるのは非常にありがたいですね。

荻間:
テレノーカーであることについて、周りの反応はどのような印象を持たれますか?周りの農家の方々とギャップを感じることはありませんか?

岡木さん:
凄く好意的な意見が多いと思っております。農業界全体が新しいことに挑戦する機会が、他の業界に比べると少ないと思っています。しかし、その分挑戦する姿勢に対して、好意的な印象を持つ人が多い業界だと思います。

それに加えて、農家自体が高齢化してきているので、「このままじゃ良くないよね」という農業界全体の問題意識があります。その問題に向けた新しい取り組みを行うことについて歓迎いただいており、非常にありがたく思っています。

先輩テレノーカーの岡木さんから読者へのアドバイス

荻間:
最後に農業界に参入するのはハードルが非常に高いと思われている人が多いと思います。農業に興味ある人、あるいは就農を考えてる人に向けて、アドバイスや経験談を教えていただけると助かります。

岡木さん:
実家が農園を経営している私でも分からなくて不安が多くありました。農業に取り組むのがハードルが高いと思われてる人の気持ちもすごくわかります。そのため、いきなり就農から考えるのではなくて、農家の方と実際に話してみることから始めていただくのがいいのかなと思います。

例えばですが、一日バイトみたいな形で農作業を仕事としてできる機会もあります。その時は観光農園ではなく、リアルな農家に行って生の声を聞いていただきたいです。

農業は大変ではありますが、私の体験としては、サラリーマンの時と比べて、精神的なストレスはすごく減りました。実はサラリーマンの時に毎週月曜日になるとお腹が痛くなってたんですが、農家になってから一切それがなくなりました。

いきなり農家にフルスイングするっていうのは難しいとは思います。ただ、人生の選択肢の一つに農業があることによって、精神的には安らかになる人もいると思います。いきなり農業にフルスイングするのではなく、農業体験や農家の方と話してみるなど、できるところから農業に近づいていただきたいなと思ってます。

荻間:インタビューは以上となります。ご協力いただきありがとうございました。

今回はブドウ農園の経営とノウタス株式会社の取締役兼長野支社長を勤める岡木さんにお話を伺いました。テレノーカーならではの苦労もありますが、それ以上に農業と別の仕事を組み合わせたチャレンジを楽しんでいるのが伝わりました。

これからもテレノーカーとして活躍される方々にスポットを当て、様々な視点からのインタビューを通じて、その魅力と挑戦をお届けしていきます。次回の配信もお楽しみにお待ちください。

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